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2010年03月 アーカイブ


「宇宙なボクら!」と「伯爵カイン」

こんにちは。グヮタです。

白泉社文庫の編集を担当していると、何年も前に読んだ作品を企画や校正のために再読することになります。その作品に出会ったのが雑誌連載だったり単行本だったりの違いはありますが、あくまで作業として読みながらも、いろいろな思い出が刺激されて感慨深いものです。読者の皆さんも、それぞれの作品に結びついた思い出がきっと蘇ることでしょう。

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今週発売されたばかりの3月刊、日渡早紀先生の「宇宙なボクら!」1・2巻や、由貴香織里先生の「伯爵カイン」5・6巻などはこれで完結となります。こういう連載作品の最終回では、日渡先生のハートウォーミングで前向きなメッセージや、由貴先生の深い哀しみと静寂に満ちた余韻など、いろいろ感じることが多いですね。

最終回や最終巻の雰囲気って、長い物語を紡いできた作者と、連載やコミックス刊行を支えた読者が、共同で作り上げたものだと思います。時間をおいて文庫化された作品をまとめ読みしたときに、作品のパワーを楽しみながらも、そういうお祭りに乗り遅れた感が、ちょっとだけしたりしませんか? 私の場合、そういうお祭りがあったこと自体を感じて楽しむというか、歴史の一部を見るような気持ちになることも多いです。

今回、日渡先生はあとがきを書いて下さり、由貴先生は描き下ろしショートを描いて下さいました。これまでの読者の皆さん、そして今回文庫を手にとって下さった皆さんへ向けてのメッセージです。まだお読みになっていなければ、ぜひ読んでみていただきたいと思います。


15年が経ちました。

こんにちは。グヮタです。

今日は、もうひとつエントリーを書きます。

明日、3月20日で、三原順先生がお亡くなりになって15年になります。

代表作「はみだしっ子」をはじめ、「ルーとソロモン」「X Day」「Sons」など、白泉社文庫に多くの作品を預からせていただいています。最近、読み返す機会がありまして、改めて作品の力強さに心打たれるとともに、大きな喪失感を覚えています。

弊社には、少女期・青春期に三原作品に出会い、人生を誤った(?)人間が複数おり、それぞれの部署で日々新しい作品の誕生のお手伝いをしております。他社の編集者にも、まんが家さんの中にも、影響を受けた方が多くいらっしゃいます。ネット上には、読者の方々が先生への思いを綴った文章がたくさん存在しています。


あ、三原作品の素晴らしさをいまさら強調したくて書き始めたのではないのでした。
そんなこと、このブログを読んでいる皆さんには当たり前のことですよね。


さて。文庫各巻には、巻末解説として、同時代を過ごされた何人かのまんが家さんの文章が収録されています。その中で、「三原順傑作選 ’70s」に収められた和田慎二先生の「三原 順の旅路」という文章に、こういう一節があります。

「だが彼女の投稿作を目にする機会に恵まれた常連投稿者にとっては、いやおうなしに意識せざるを得ない作家であった。この時期にファンと敵(ライバル)を作っていったことを彼女自身は知るまい。」

「別冊マーガレット」の「少女まんがスクール」投稿時代の三原先生について触れられたこの一節を読んで、「雑誌」という器によって読者と作者が結びつき、一緒に育っていくような在り様に感動を覚えました。

ひとつ前のエントリーに書いた、最終回のこともそうなのですが、こういう、雑誌によって育まれる目に見えない連帯感みたいなものって、素敵だなと思うのです。

三原先生の「はみだしっ子」の場合でも、その作品の素晴らしさは言うまでもないのですが、「花とゆめ」に連載されていた当時の、付録だったり口絵だったり読者投稿ページだったりを通じての盛り上がりが、その時代に読者として参加された方々の心に、強い連帯感を残したように思います。

そして今、「花とゆめ」や「LaLa」の誌上では、常に新しい連帯感が形作られているのでしょう。


白泉社文庫で三原作品を読んでいただく際に、こうした雑誌掲載時の熱みたいなものを想像しながら(あるいは思い出しながら)楽しんでいただくのも、味わいがあるのではないでしょうか。


ちなみに、まだ三原作品を読んだことがない方、特に男性には「ムーン・ライティング」をオススメしておきます。私個人は「Sons」の大ファンなのですが、これは「ムーン・ライティング」の次のお楽しみ。十分慣れたら「X Day」へ。