子どもをまだ見ぬ世界に連れていく
人生を豊かにする絵本をつくりたい
INTERVIEW
kodomoe編集部/2017年入社 T.H
雑誌『kodomoe』と絵本の制作、WEBサイトを同時に進行


私が白泉社を志望した理由は、絵本づくりに携わりたかったからです。絵本に関心を抱いたのは、大学時代の児童養護施設でのアルバイト経験から。施設で子どもたちが絵本を通して、「いただきます」や「ごちそうさま」の挨拶や歯磨きなど、生活にまつわることを学んでいる姿を見て、「絵本っていいものだな」と思ったことがきっかけでした。教育分野にも興味を持ったのですが、学校の先生は目の前の30人ほどとやりとりするのに対し、出版物は日本中・世界中の子どもたちに届けられると考え、絵本を出版している会社を第一志望に就職活動を行いました。また、私の父はいわゆる一般企業に勤めていたのですが、子どもの頃は父がどんな仕事をしているかよくわからなかったんです。自分は「こんな仕事をしている」と具体的に説明できるような仕事に就けたらおもしろいなという思いもありました。
配属先の第一希望は、絵本をつくっているMOE編集部とkodomoe編集部でした。当時まんがをほとんど読んだことがなかったこともあり、『MOE』や『kodomoe』でなければ、販売部や宣伝部かなと思っていたのですが、最初に配属されたのはヤングアニマル編集部でした。青年まんが誌の知識がほぼゼロの状態だったため、最初はまんがを読んで勉強する日々でした。2年目になると、『3月のライオン』のサブ担当をやらせていただいたり、初めての立ち上げ連載『Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士として暮らしてます』を世に送り出したり、グラビア撮影の担当チームになったりと、まんが編集のおもしろさ、やりがいを感じるようになりました。
念願の絵本編集部である、kodomoe編集部に来たのは約4年前です。育児雑誌『kodomoe』と「kodomoe web」、絵本を扱う部署で、今はすべての媒体に携わっています。kodomoe編集部が出す絵本は、まんが雑誌と同じような形式で、雑誌の付録絵本として掲載した後に単行本化する手法が基本です。隔月発行の雑誌の記事の編集・進行、付録絵本の制作、絵本の単行本化、webでの育児まんが等の連載という、それぞれペースの異なる業務を同時に進めていきます。
絵本の記憶が、人生を少しでも豊かにしてくれたら


絵本もまんが同様、担当編集が作家さんに声がけをして、企画から出版まで二人三脚で歩みます。打ち合わせを重ね、ラフスケッチを何度か描いてもらい、ブラッシュアップを終えると、いよいよ本番の絵を描くフェーズに入ります。いざ作家さんが描き始めたら変更が難しくなるのが絵本づくり。そのため本番までに、緻密な調整を繰り返します。完成した絵があがってくると、デザイナーに渡して、文字入れやレイアウトを行い、データを印刷所に入稿します。色校をチェックし、必要があれば修正を行い、編集部のチェックを経て印刷されます。最初に『kodomoe』の付録絵本として世に出て、約半年後に、先述の通り今度は単行本化へと進みます。
初めての絵本の担当作品は『なにになれちゃう?』という写真絵本でした。著者はヤングアニマル編集部時代に出会ったボディペイントアーティストのチョー・ヒカルさん。当時、アメリカの大学に留学していたチョーさんが現地で感じた、「見た目と中身は違う」「なににでもなれる」というメッセージをこめた絵本にしようと決まりました。絵本の内容は、手がちょうちょに、肘が桃に見える、という見立てを楽しむボディペインティングの絵本なのですが、テーマをより伝えるため撮影でも工夫をしました。性別や年齢、人種や国籍もバラバラのキャストを集めて、ボディペイントに協力してもらったのです。今思い返しても、異動して半年の中で、未経験のことへの挑戦ばかりの企画でしたが、「白泉社は若い人のチャレンジを応援してくれる懐の広い会社だし、やってみよう」の気持ちで走り抜けられたと思います。
最近では『おにぎり ぱく!』も担当しました。食べ物の断面をシズル感たっぷりに描く絵本があったらいいなと構想していた中で、食べ物絵本を数多く手がける作家ユニット・はらぺこめがねさんにお声がけしました。おにぎりのほか、サンドイッチなどの案もあったのですが、打ち合わせを経て、“おにぎりの中身が見える瞬間”がテーマの絵本をつくることに決まりました。最初は鮭などの定番の具、最後には驚くような具がおにぎりから出てくる流れで、子どもが日常の生活でよく知っているところから、ちょっと意外な世界に連れていくような絵本を目指しました。幼少期に読んだ絵本の内容のほとんどは成長する過程で忘れていってしまうと思いますが、記憶の中にわずかでも残って、どこかでその子の人生を豊かにしてくれたら嬉しいなと、思っています。
誰もが知る“名シーン”づくりにチャレンジしたい


絵本編集の魅力の一つは、作家と“子どもたちにとってよいものをつくる仲間”になれること。作家さんは、仕事の取引相手ではありますが、目指している目標が同じである相手と仕事ができるのは、社会人として恵まれていますし、単純な商売とは異なる魅力があると思います。そして編集者としては、作家さんにとって名刺になるような作品、次の仕事につながる作品をつくりたいと常々思っています。本ができた後、「一緒に仕事してよかった」「楽しかった」と思ってもらえるように、ひとつひとつのコミュニケーションを丁寧にするよう心がけています。
今後つくってみたい作品は、言葉をテーマにした絵本です。例えば、世界のいろいろな言語の挨拶など、意味はわからなくても、異国の響きやリズムを楽しみながら言葉のおもしろさを体感し、読者である子どもたちが新しい世界にふれるきっかけになる絵本ができたらいいなと考えています。また、絵本のタイトルやくわしい話までは知らなくても、誰もが「このシーンだけは知っている」と言えるような、名シーンをつくりたいとも思っています。白泉社はどんなことにも挑戦できる、応援してくれる会社です。ぜひ皆さんもどんどんチャレンジして、白泉社で“一番最初の人”になってもらいたいと思います。