着色

  1. 1.全体の色のイメージを決めるために薄く色を入れます。

    色をぬりたい場所に最初に水をぬって画面を湿らせておいて、
    乾かないうちに色を薄くぬってぼかすとぬりムラが出にくくなります。
  2. 2.ぬりえを手にした時「形は変えずに、どれだけリアルな立体感や質感になるか」に挑戦してみようと思いました。そのためにはまず輪郭線を目立たなくする必要があります。

    絵の具にホワイトを混ぜて線の上からも色をぬっていきます。

    美内先生のきれいな線を消してしまうなんて…と少々後ろめたく思いながらも、線が消えるとだんだん立体的なイメージが沸いてきました。

  3. 3.全体に立体感をつけていきます。立体感を出すには光が当たる方向を考える必要があります。今回はマヤの顔が明るく見えるように、左側から光が当たっていることにしました。

    髪や顔など右側に影が出来ているように描いていきます。
    髪の毛は大まかに毛の流れを作りながら陰影をいれていきます。

    描いているうちにマヤが浮かび上がるようにしたくなって、背景の色を変えました。

  4. 4.バラの花を立体的に描きこんでいきます。

    この段階からは色にボリュームを持たせるためにホワイトを入れて明るい色と影になる濃い色を作り、
    少し不透明な色にしながら描きこんでいきます。
    ガラスの仮面といえばやっぱり紫のバラでしょう。寂しい印象にならないように少しピンク系の紫にしていきました。
  5. 5.髪の毛を描きこんでいきます。マヤは普段はあまり目立たない学生というのが私のイメージなので、髪の色をもう少し落ち着けたいところです。

    絵の具の黒は無機質で色が強く出すぎるように感じるので、バーントシェンナ(こげ茶)とコバルトブルー(青紫)を混ぜて黒に近い色を作りました。
    背景にもコバルトブルーを使っているので、全体のトーンによくなじみます。
    明るい部分は背景色のマゼンタ(赤紫)を乗せてぼかすことで、髪の質感を柔らかく表現しました。
    額に生え際も描き加えました。あまり黒髪にしすぎても重い印象になってしまうので、このくらいの濃さにしておきました。
  6. 6.瞳を描きこみます。

    黒目がはっきりするように描いてから明るい部分をぬりこみます。
    潤んだ質感を出すにはハイライトが大事です。
    少し青みを入れて澄んだ色にしました。
    どう入れるか考えてみて、人影が映りこんでいるようにしました。

    マヤの瞳に映るのは誰なのか…というイメージです。

  7. 7.顔も光の当たり具合を考えながら描きこんでいきます。

    肌が整ったらメイクをする感覚で唇の色をぬっていきます。
    ハイライトを入れて「うるつやリップ」に。
    指も爪を描き、
    服のシワも描きこみました。
    全体のイメージがまとまってきました。
  8. 8.仕上げは「ガラスの仮面」です。

    グラスなどガラス製品を観察して透明感と質感を考えながら描いていきました。制作中、北海道はこの時期では29年ぶりという大雪が降りました。背景にも雪が舞い降りるような光を入れたくなって描き入れました。最後に画面の外側に貼っていたマスキングテープをはがすと、すっきりとした仕上がりになりました。

    このお話をいただいた時、すぐに「やってみたい!」と思いました。ぬりえに挑戦するのは初めてだったのですが、実際に描いてみると思っていた以上に楽しい制作でした。この形を立体化するとしたらどうなるのか…と、いつも以上に考えて夢中になりました。描けば描くほど元の美内先生の絵から離れていく、そのギャップを楽しんでいただければと思います。

  9. <最後に>
    9.木製パネルは厚みがあるので壁にプッシュピンを刺して掛ければ、そのまま飾ることができます。

    側面の貼りつけていた部分にカッターで切りこみを入れれば、剥がして1枚の紙に戻すこともできます。パネルの側面に残ったテープは水で湿らせれば剥がすことができるので、何度でも水張りに使うことができます。

「月刊MOE」のイラスト・コンテストでデビュー。その後イラストレーターとして主に本の挿し絵を描くようになる。 白泉社文庫「ガラスの仮面」のほか、最近の作品として児童小説「クマと家出した少年」「クジラに救われた村」「王宮のトラと闘技場のトラ」(さ・え・ら書房)などの表紙を描いている。

2017年3月1日(水)~31日(金)

札幌で個展「わらべのこよみ」
(北都館ギャラリー/札幌市西区琴似1条3丁目1-14)を開催予定。